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先日昇仙峡へ行ったとき、花崗岩の欠片をルーペでのぞいていた。花崗岩は石英、雲母、それに長石からなる岩石である。 その長石を見ながら学生時代を思い出していた。 私は学生の頃水晶の合成を行なっていた。いくつもテーマを与えられ、正直言って困っていたのだが、そのうちの中に、@水晶を合成する時に不純物としてAlを入れてゆくとどうなるか?というテーマ。さらにA変な水晶を作れという教授からのお達しがあった。 はじめ@の合成及び微量分析の実験もうまく行かず、Aの方はサボっていた。 Aのテーマは、教授の意地で、東北大学の鉱物学の教授に『天然水晶は長い年月かけて成長したもので、人口水晶は短い時間(3ヶ月程度)で急速に成長させるものだから、振動子や発信子として使うのには特性が悪いに決まっている』とか何とか言われ、うちの教授が頭に来て、じゃあ悪い水晶というものを人工的に作って証明してやるということになったらしい。 とばっちりも良いところ。 天然水晶 学部生の頃は@の実験だけで、ほとんど合成がうまく行かず、水晶中に含まれるAl、Fe、Naの微量分析を行なっていたのだが、出る結果出る結果まちまち。ほとほと困った。 そのテーマを院生になっても引きずって、やっと@のテーマはクリアーできた頃、突然・・・そう、突然、『変な水晶』が出来てしまった。作るつもりもなかったのに。 どういうものかというと、種水晶の下半分は正常に成長しているのだがもう上半分は水晶が成長しておらず、かわりに白い粉末がこびりついていたのだ。 教授も30年以上水晶の合成を大学や民間企業で行なってきたがこういう現象が起こるのは極めてまれで過去2度しかなかったとの事。 その頃すでに修士論文のテーマが決まって、来る日も来る日も徹夜に近い状態で実験をくり返していたのだが、教授が怒り出し、変な水晶が出来た原因を何故解析しない、と言われてしまった。 私も時間がないので、もう必死。徹夜で、その変な水晶の観察と分析、問題の白い粉末状の反応生成物の分析を行なった。 その頃は、今のように分析装置がPCと連動しておらず全てマニュアル解析であった。X線ディフラクトメーターのデータも全て膨大なJCPDSカードというものから一致するものを探し出さねばならず、それだけで3日徹夜した。 さらにその粉末の元素分析を原子吸光という分析装置で行い、何とか、Na(ナトリウム)とAl(アルミニウム)のモル比が1:1という所まではつかめた。残念ながらSi(シリコン)のモル比は試料量が少なかったためか精度が悪く、Na:Al:Si=1:1:約6〜9くらいという値が出た。 しかし、鉄は存在していないこともわかったので、この白色粉末の組成はNaAlSi(6〜9)OXという見当が付いた。 後は前述のJCPDSカードのインデックスを調べれば良いのだが、上記4元素から成る物質の種類が膨大で、数100種類以上ある中から8つに絞り、さらにこれだというものを探り当てた。ここまでするのに約10日かかった。 結果はNaAlSi3O8(Albite)というもので、ほとんどの岩石に含まれる長石類の1つであることがわかった。 〈長石類〉 長石類には約20種類があるが、含有成分によりカリ長石類(単斜晶系)と斜長石類(三斜晶系)に分類され、前者の代表格は正長石(せいちょうせき:Ortboclase:KAlSi3O8)で、後者の代表格は曹長石(そうちょうせき:Albite:NaAlSi3O8)と灰長石(かいちょうせき:Anortbite:Naの代わりにCaが入る)がある。中性長石(ちゅうちょうせき:Andesine)はそれらの中間あたりの組成になっているものである。 6月の誕生石のムーンストーンは正長石の分類に入る。 次に問題になるのが、何故このようなもの(アルバイト長石)が出来たのかということと、どうして『変な水晶』が出来てしまったのかということ。 何故アルバイト長石(NaAlSi3O8)が出来るのかは、ある意味当たり前で、水晶を作るオートクレーブの中には、溶液のNaOH(水酸化ナトリウム)と不純物として加えたAl箔、それに原料の屑水晶(SiO2)しかないのだから単純に、 2NaOH+6SiO2+2Al → 2NaAlSi3O8+3H2 という反応が水晶の成長と同時に起こったと考えるしかない。 残りの一つは、何故種水晶の上部が成長しなかったのかということ。 これは臨界点付近の温度の液体とも気体とも言えない状態の高温、高圧状態のNaOH溶液(媒質)の中で雪のようにアルバイト長石の粉末が生成し、上部から降り注いだ結果、種水晶の上部表面に付着し、その結果その部分の水晶の成長が妨げられたものと推測された。 そこまでわかった時、それまでの疲れもありしかもインフルエンザにかかり土日含め4日高熱を出して休んだのだが、その間自宅でレポートを書き上げた。 もって行った早々不機嫌そうな教授にそのレポートを渡したところ、しばらく読んでいて、今日の輪講で発表しろということになった。その日はよその大学の助教授も来ていたので焦ったが、これまでの結果と考察を全てを話した。 その後教授に残され、「何故一言も相談せずにやったのだ」と怒られたのだが、気分はもう開放感に包まれていて、そのまま先輩や同級生と飲みに行ってしまった。 もちろん翌朝、教授の大目玉をくらったことは言うまでもない。 でも、結果的にはテーマAもできたということになる。その後卒業論文発表と卒業面接が無事すみ、しばらく時間が余ったので、私の推理が正しいか否か再現実験をした。 今度の合成は種水晶の片面をわざと荒らしたままでおこなった。高温高圧状態でできたアルバイト長石の粉末が種水晶に引っかかりやすくしたのだ。もちろん裏面は通常行なうようにポリッシュ研磨を行なって、表面の平坦化をしていた。最後に両面ともフッ酸処理を行い、加工層の除去を行なった。 結果は予想通り、種水晶の荒らした面に再度異常成長が現れ、半対面には現れなかったのだ。教授と最後まで議論していた所だったが結局私の説が証明された形になったのだ。 で、また打ち上げ会になり飲みに行ってしまい、翌日また怒られたのだった。どうして私だけ残らなければならないんだよ。と心の中では思っていたのだが。教授には逆らえない。 長石(Albite) その後しばらくたって、本を借りるため、教授部屋をたずねた。教授は留守で、一冊の英語の論文が教授の机の上においてあった。例のアルバイト長石の生成のことだ。急いで盗み見てわかった。 私の名前がない。教授の名前と輪講の時来ていた別の大学の助教授の名前で出ていた。ちょっと頭にきたけどしょうがない。 そうかあの時、『何故私に相談せずに実験を行なった』と怒ったのは、このことだったのかと思ったけど後の祭り。それならそうと言ってくれればよかったものを。でも怖くて教授の顔を見ることが出来なかった。 教授と親しく口を聞けるようになったのは、卒業後であった。私は民間企業へ就職したが、1年後教授から頼まれ、土日は大学に行くことになった。学生達の面倒と、研究のため。いつでも好きなときに中へ入れるように鍵を預かった。もちろん給料はなかったけどね。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 気が付いた時にはもう夕方になっていた。昇仙峡は標高が高いので少し寒くなってきた。 手にはルーペと花崗岩の破片。 長石を観察しながら、しばらく思い出にふけっていたのだ。もう帰らなければ。 この続きを書くことが有るのかな?先生は亡くなってしまったから怒られることはないだろう。 P.S. 長石が出来たのはいいけど、果たしてこの長石って価値はあるの?とお考えの方は居ると思います。先に述べた正長石の結晶であるムーンストーンなんかの中でも美しいものは価値が有るが、残念ながらこのアルバイトに関しては宝石的価値は全くない。 ただ学問的価値は別で、この実験をきっかけに地下で長石と石英などが生成する条件などが実験的に証明することが出来たり、当時の地下の状態を考察することが出来るのだ。 それがなんの役に立つのかって?・・・・・さあ?今の所はわからないね。でも学問のほとんどはそういうものでしょう?そういう積み重ねが大事なのです。興味のない人は覚えなくていいよ。私もそういう人には興味がないから。 Sammy−p お手数ですがこの記事のご評価をお願いいたします。 ![]() ポチしてくれたらうれしいです! にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村 ![]() //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// 地球を学ぶ〜大自然博物館〜 岩石と鉱物 10cmの水晶玉(クリスタルボール)C-1おすすめ度 : ![]() コメント:私も水晶球をいくつか持っています。直径4cmくらいかな?結構高価なのですね。これなんかそれよりずっと大きいのにかなりお安いですね。 果たして水晶球のエネルギーはあるのでしょうか?時々水晶をなでていると力が湧いてくるような・・・・するかな? https://bn.my-affiliate.com/partner/partner_img.php?fn=00000020/BANNER_F1.gif 【期間限定】ページにバナーを貼るだけで1000円もらえるの?! セルロースハンドブック―化学・工業 (1958年)
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