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「あの人はすごい金持ちらしいわね」 「そうらしいわ。でもあの人、もと、どこかで、ヤクザだったっていうじゃない。だから、どうせ不正な手段で手に入れた金よ。でなきゃ、あんな暮らし、できっこないわ」 「そういえば、あの人の家には、ときどき、とても嫌な感じの、とても目の鋭いアロハシャツ着た男が出入りしているわ」 「もとヤクザだから、類は友を呼ぶってわけでしょ!」 「それにしても、あんな高級車に乗って、あんなぜいたくな生活ができるなんて、幸せね」 「そうかしら、私はそうは思わないわ。あんな生活が幸福だなんて!―私に言わせればダモクレスの剣よ。いつヤクザ同士の喧嘩で殺されちゃうかもしれないし、また、いつ、警察にふみこまれるか、知れないんだもの」 どうもイントロが長くて恐縮だが、この言葉は、こんな風に、たまに使う人がいる。 そこで書くのだが、むかし、イタリアはシシリー島のシラクサの僭(せん)主ディオニュシオス一世(前430〜367年)に、廷臣として使えていたダモクレスという男がいた。 蛇足かもしれないが、「僭主」(タイラント)というのは、簡単に言えば、古代ギリシャで、主として貴族や平民の抗争を利用、非合法手段で政権を占有した独裁者のことだが、それはさておき、ある日、この男(ダモクレス)が、よせばよいのにディオニュシオスにおべんちゃらをいって、 「あなたの幸福が羨ましい!」といったのだ。 するとこれを聞いたディオニユソスは、ある日、彼を豪華な宴会に招いて、彼の席の真上の天井から、日本の馬の尾毛で、抜き身の剣をぶら下げておいたのだ。 まねかれたダモクレスは、はじめそれに気づかなかったから、いい気持ちで山なす山海の珍味に舌鼓(したづつみ)を打っていた。が、やがて、ふと上を見て、頭上の鋭い剣に気がつくと、顔面蒼白、あわてて席をしりぞいた、というのである。 つまり、ディオニュシオスは、こうして彼に、一見幸福そうに見える僭主の地位が、いかに、絶えず不安と危険にさらされているか、をおしえたのである。このことから、「ダモクレスの剣」といえば、常住、身に迫る危険の上に保たれている幸福、の意となった。 「いいですね、あなたは。高位高官で、高級とりで、みんなからぺこぺこ頭を下げられて・・・」 「冗談じゃない。こんなポスト、ダモクレスの剣ですよ。新しい長官がやってくれば、いつ追い払われるかわからない」 こんな風に使うのもいいですね。最も、実際に使う人はたまらないが―。 なお、この話は、ローマの雄弁家で政治家のキケロ(前106〜43)によって伝えられ、西洋では諺になっている。 SAMMY−P ポチしてくれたらうれしいです! にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村 にほんブログ村 ![]() //////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////// ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) 新潮文庫 新潮社 塩野 七生 ユーザレビュー: 薄さがいい。独特の文 ... 現代に通じる歴史書 ... ここから始まる大レー ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) 新潮文庫 新潮社 塩野 七生 ユーザレビュー: 王制から共和制へ ロ ... 積み重ねています。こ ... ギリシャから2000 ...Amazonアソシエイト by ウェブリブログ |
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