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help リーダーに追加 RSS われわれの使っている日本語の中の仏教用語

<<   作成日時 : 2008/11/03 17:40   >>

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 前五世紀のはじめ、中部インドで釈迦牟尼が説いた教え、すなわち仏教が、わが国に伝わったのが五三八年(宣化三年)ということになっているが、以来仏教はこの国で栄え、その文化に決定的な影響を与えたことは、万人周知の事実である。

 いまでこそ“葬式仏教”などといわれて、仏教は多くの日本人の精神生活にとって影の薄い存在―というとお坊さんや熱心な信者に叱られるかもしれないが―になっているが、しかし、いくら仏教から離れた現代人でも、その日常の言語生活においては、意識すると否にかかわらず、だいぶ、仏教のお陰を蒙っているのである。

 というと怪訝(けげん)に思う人もおられるかもしれないが、仏教用語はそれほど日本語の中に定着してしまっているのだ。
 そこで今回は、普段われわれが知らずして使っている、仏教から出た言葉のいくつかについて、そのもとの意味をたずねてみることにした。

 何らかのご参考になれば幸いでである。


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奈落(ならく)―「人生一度奈落に落ち込んでしまいますとね、なか
なか再生できないものですよ」などと使うときは、どん底とか、浮かぶ瀬のないところ、の意だが、この言葉はもとは梵語「ナラカ」の音訳で、「那落迦」とも書き、地獄の意だった。それが転用されて、どん底などの意に用いられるようになり、また劇場で舞台の下のことを言うようになった。

畜生(ちくしょう)―「こんちくしょう!」「あの畜生めが・・・」などと使うが、これももともとは仏教用語で性質が暗愚で自立せず。他のために畜養される生類のことをいい、悪行ばかりしていて愚痴多き衆生は、死んでから畜生に生まれ変わる、と説いた言葉。今日では、獣類一般について言ったり、また義理人情をわきまえぬ人間の蔑称として用いている。

馳走(ちそう)―「わあ、すごいご馳走だ!」などというときは、振る舞い、饗応、立派な食物、おいしい食物の意だが、もとは走り回ること、その用意に奔走するの意だった。

旦那または檀那(だんな)
 これは梵語「ダーナ」の音訳で、布施(ふせ)の意。また梵語「ダーナパティ」の略として、財物を施与する信者のことを沿うが呼ぶときのことばで、施主、檀越(だんおち)と同じ。

 ところが、今日では「ねえ、お檀那さん、もっと給金上げてくださいよ」などと使い、店員が店主のことを言ったり、あるいは商人が男の客のことをいったり、目上の者を呼ぶのに使ったりしている。
すべて“財物”をくれるところが、もとの意に似ているからだろう。

退屈(たいくつ)
 漢語としては、退き降伏するとか、物事に飽きる意だが、仏教用語となって、菩薩行中に生じる三退屈といって、菩薩広大屈、万業難修屈などと使い、こういう退屈を退治することを“三練磨”というそうだ。たとえてみれば、それは今日の会社員にとって会社が行う根性教育みたいなものらしい。こういう意味から転じて、いつの間にか退屈といえば暇で困る意になったわけ。

 なお、“退治(対治)”と言う言葉が出たからいえば、これも仏教用語では、適当な方法で人々を仏道に化すること、また悪魔を降伏(ごうぶく)することの意である。

大衆(たいしゅう)
 この言葉は仏教では「だいす」とか「だいしゅ」とか読んで、多くの僧侶のことを言うのだが、そこから転じて「たいしゅう」と読むようになり、今では大衆化、大衆課税、大衆伝達、大衆文芸などといういろいろな熟語もでき、多数の人、多衆、民衆、労働者・農民など一般勤労者階級の意となった。

冗談(じょうだん)
  「それはご冗談でしょう?」「冗談言うのもほどほどにしろ!」などと使うときは、いうまでもなく、無駄口、無駄話の意だが、これも、もとは仏教用語で、仏道修行に関係のない無用の談をいう。

後生(ごしょう)
  「お前、大学へ行っても、後生だからゲバ棒(わかるかな?)なんか振り回さないでくれ」などと使うときの後生は、人に哀願するときの言葉だが、これも、もとは仏教で、のちの世に生まれ変わること、またその世、つまり来世、未来、先の世の意だった。

一心不乱
 一時に心を注いで他のことのために乱れない意であることは言うまでもないが、この言葉も、もとは仏教用語(阿弥陀経などにある語)で、、心を一にして散乱せざる意。

一味
 「あのチンピラは××組みの一味だ」などと使うときは、見方、同志の意味だが、これも仏説の、機に応じて多様であるが、その本旨は同一である、の意から転じた言葉。

 私はうどんやそばを食べるときは一味より七味の方がいいけどね。

★皮肉(ひにく)
 「何もそんな皮肉を言わなくてもいいだろう」とか「皮肉屋」などとよく使うが、これももとは仏教用語で、骨髄にあらざるもの、つまり、肉と皮の意だったのが後世転じて骨身にこたえるような鋭い非難とか、ユーモアを含んだ遠まわしの意地悪い非難、あてこすり、の意となったもの。

★到底(とうてい)
 「そんなことは到底できない」などと、これは副詞として、つまるところ、どうしても、とても、の意に使っている。が、これも、もとは仏教用語で畢竟(ひっきょう)といういみであった。
 もっとも、この“畢竟”と言う言葉も、いまでは到底とほとんど同意語で、つまるところ、所詮、結局の意で使っているが、もとはやはり仏教で、“究竟”ともいい、最後の果てまで極めつくすことであった。

道具(どうぐ)
 この単語はもと禅僧の語に起こったらしいが、仏道を進めるために役立つ物具の意から転じて、僧家にある器物の総称となり、それがまた転じて、武家で槍や長刀(なぎなた)を称するようになり、それがさらに転じて、今日のように、その道に使用するいっさいの器具、調度、什具の類、あるいは人間の手の補助的手段としてつかうものもので、人力によって動かされる、いっさいの加工用器具の総称となった。

娑婆(しゃば)
 囚人が釈放されて「ようやく娑婆に出られる」というなど、このことばは、自由を束縛されている刑務所とか、また昔なら軍隊や遊郭などに対して、その外の自由な世界の意で使っているが、これももとは梵語に漢字をあてはめたもので、忍土、忍界と訳されていることば、言うまでもなく人間が現実に住んでいるこの世界、俗世界、現世の意で、他の仏国土と区別してこう呼ぶのである。
 私も早く今の会社から娑婆に出たいなー。

波羅夷(はらい)
 「あいつは役に立たん、お払い箱だ!」のお払い箱の語源がこれである。梵語「パーラーヂカー」の音訳だそうで、無余、断頭、不共住などの訳もあり、もとは仏教の戒目の名で、邪淫、殺生、偸盗(とうとう)妄語の四罪のことをいい、極悪罪としてこの罪を犯した者は永久に仏法の外に棄てられることに定められていた。ここから転じて解
雇、放逐の意で「おはらいばこ」の俗語が生じたもの。

方便(ほうべん)
 「うそも方便」などといわれるが、これももとは梵語で、衆生を教え導く巧みな手段の意。真実の説法に誘い入れるために仮に設けた法門などの意だが、転じて目的のために利用する便宜的手段を意味する
俗語となった。

★融通(ゆうずう)
 「あの人は融通が利かないからだめだ」などとよく使う言葉だが、これももとは仏教で事理が相互いにつうじて差別や隔絶することのないことを言っていたが、転じて世間では金銭のやりくりとか、貸借とか、あるいは臨機応変にことを処理するの意でつかうようになった。


 その他、端的、発起、利益、行脚、安心、意識、有頂天、厭世、、覚悟、講師、寄付、苦言、愚痴、火炎、懸念、根性、最後、自業自得、支度、邪魔、随分、絶対、増長、当分、智慧、頭巾、提唱、兎角、如実、莫迦、秘密、不如意、変化、法螺、妄想、未来、名字、迷惑、用心、流転など、まだまだたくさんある。


 キリがないからこの辺でやめさせていただくが、ひとつの言葉にも思えば大変な歴史があるわけだ。
 なお本稿の一文は「新仏教辞典」、角川「新字源」、新村出「広辞苑」、平凡社「大辞典26巻」その他を参考にした。


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                                                          Sammy−P



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